2008年1月9日水曜日

半井小絵(なからいさえ)さんに迫る



原稿を読むだけと思っていた


――キャスターの仕事とは?

正直、最初は気象キャスターというのは誰かが書いてくれた原稿を読むだけと思っていました。ところが実際は違っていて、気象予報はもちろん、使う天気図や映像VTR、構成や原稿すべて気象予報士が自分でやるんです。


驚いたのと同時に大変なプレッシャーで。今でも毎日緊張しているのですが、最初は本当に余裕がなかった。



――日課を教えてください


NHKへ出勤するとすぐに、気象庁から送られてくる高層天気図やアメダスなどさまざまな情報をチェックし、自分なりに分析をして予報を立てます。


おだやかな天気であれば、季節感をより充実させた原稿内容を考えますし、災害など緊迫した状況であれば、生命にもかかわるだけに防災のために必要な正確な情報をいかに伝えるかを考えます。


いずれにしても、本番直前までどういうコメントにするか、どの情報を使うべきかをずっと考えています。



――月曜から金曜まで、緊張の連続ですね


5年目なのになかなか慣れなくて。気を引き締めていることが多いですね。それでも、視聴者の方から「応援していますよ」とお手紙をいただいたり、小学生から「予報士を目指しています」と言ってもらったりすると、疲れも吹っ飛びます。


この仕事が私の天職かどうか、実のところまだわからない。でも、多くの人たちに自分が予報した天気を伝えられるのは、とても幸せなことだと感謝しています。
自然と向き合いパワーもらう


――そんな今の、半井小絵さんのパワーの源は何なのでしょう


やはり、視聴者の方をはじめ、家族や周りの方々ら私を支えてくれる人々。とくに祖母の存在は大きい。高齢の祖母が楽しみにしてくれていると思うと、心底頑張ろうと力がわいてきます。


気象の仕事に携わるうちに、最近は有機農業への関心も高まってきました。この夏は山形県高畠町の農業合宿に参加したのですが、そういう場所で出会った人たちからパワーをもらうことも多いです。


自然と向き合うことで、自分なりに無駄なものが多すぎると教えられました。自然と触れ合うことが私の大きなエネルギーになってくれるんです。



――高畠は、高度成長期から有機農業を実践している町として有名ですね


今は安全な食だけでなく、農業の役割や環境保全、教育、文化などのモデル地域となっています。私にとっては癒やしの場所。


夕日の大きさを実感できたり、食べ物の大切が身にしみたりして、人間が生きていく上で何が大切なのかを全身で感じることができる。けっこう感化されて、勉強して将来は自給自足の生活が実現できたらいいな、と思っているほどです。



――最近は、小学生に環境授業を行ったり、講演活動をされたりしています


子どもたちに話をすることで、逆に自分自身が学ばせていただいている感じです。講演活動などで地方に行って自分自身が実際に自然を感じたり、それぞれの立場の人たちと出会ったりすることで、気象情報として何が大切なのかを深く掘り下げて考えることができますから。



――これから、どんなふうに成長していきたいと思いますか?


気象キャスターとしてまだまだ未熟なので、より正確な情報を伝えられるよう技術をアップしたい。

自分はこれをやるんだという信念を持って実践していることが、世の中の役に立つってすごいことだと思うんです。経験を積むほどに余計なものが排除され、その実践がより研ぎ澄まされていくと、本当にその人にしかできない専門職になる。そんなふうに年を積み重ねていけたら、カッコいい大人になれるかなと思っています。